アカイ ココロ





無理をするな 安静にしていろ

熱はないようですね これを飲んで休んでいて下さい

先輩が倒れたって 大丈夫なんですか

暑さにあてられたのだろう 心配はいらない

熊野を案内したかったのに 残念だね

ごめんね 俺たち気付いてあげられなくて

朔殿 何か手伝えることはないか

大丈夫よ 冷やすだけでいいみたいだから

神子 苦しいの 気が乱れている




みんな そろって
あたしが倒れたくらいで 何を騒いでるの
煩いな 出ていってよ
一人にしてくれない
少し寝かせてよ



だって起き上がったって何も変わらないのよ
景時さん 庭で洗濯物なんて
無駄よ今日は夕立が降るのに
明日にするといいわ明日はむかつくくらいの晴れだから
なんて 別に 教えてあげないけど
だってもうあなた干し始めちゃってるもの
手遅れなんだわ
何も変わらないのよ



ああ体が重いわ
手も足も 粘土細工みたいで
起き上がれそうもない
少し安心してる
だって起き上がれないなら いっそ
起き上がって足掻いても変えられなかった運命に
絶望することもない



また誰か入ってきた
潮の香りがするからヒノエくんだろう
目 あけるのもおっくうだから寝たふり
気付かれるかしら
別にいいや どうでも
それより煩わしいのよ 潮の香りが
ここが熊野だって思い出させないで
ここにいるの あの人が
だから思い出させないで



諦めるって決めたのよ
だって手は尽くしたわ
尽くした手の数だけ
あたしあの人を ころしたわ
ああなんて お綺麗な白龍の神子様
だれも知らないんでしょう
あたしのこころ 赤く赤く歪んでいるのよ
引っ張って伸ばして 元に戻そうとしたけど
不器用すぎて 余計いびつになったの



からり 音がして
やっとみんな出ていってくれた
やっと一人 せいせいするわ
さて一人で どうするつもりだったんだっけ
何かしたいと思ってたはず
そうだ いびつなこころの溝にたまった水
横になれば流れると思ったんだっけ
おかしいわ流れない
それより障子が開いたときに流れ込んだ
外のにおいがやけに気になる
湿った香りがしたの
雨は  もうすぐ


  あの人 またあの樹の下で雨をしのぐのかしら


馬鹿じゃないの
起き上がるなあたしのこころ
これ以上歪んだら壊れてしまう
わかってるでしょ
いい加減にして
もう希望なんて抱き飽きた
このまま粘土のように
固まって 干からびて



なのになぜ
頬の辺りで動く気配がするの
濡れる気配がするの
あれ こころの溝にたまってた水
なんで目尻から溢れるの
だめじゃない 動いたら
あたしの時間が動いたら
すべてを棄てた手が 足が
時間を刻みに 目醒めてしまう
静かに 鼓動が帰って来る



白と黒の雲はコントラスト
頬を撫でる風はぬるい
雨は今 激しく降り出した



夏を潤す 夕立の雫
干からびかけてた枷を溶かす
誰か あたしの名前を呼んだでしょ
呼び止めるならもっと強く
強い力で引き止めて
また運命を回そうとしてる
愚かなあたしを止めて




ずぶ濡れのあたし 見て
紫紺の瞳 細める あなた
ああ
アカイ
ココロ
またあなたへと歪んでく





十六夜熊野での望美ちゃんの独白。 ちょっとなげやりぎみになっちゃってる感じです。
でも諦めようって何回言い聞かせても、あの子は知盛を諦め切れないんだと思います。
獣のような女だしね…!(違う)
ED見たいしね…!(それも違う)
のんちゃーん、熊野でいっぱい絆あげるといいよ!ちょっくらセクハラされるけどね!(えっ


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